安全への取り組みと環境への配慮
1924年にスウェーデンで誕生したボルボは、「常に安全でなければならない」という哲学に基づき、いちはやく安全装備を取り入れてきた。今や常識の3点式シートベルトは1959年にボルボが導入したものであり、1972年には怪我のリスクを最小限に抑える後ろ向きのチャイルドシートを、1994年にはサイドエアバッグを開発している。2008年からは自動ブレーキシステムを導入、現在は歩行者検知機能付きの衝突回避・軽減フルオートブレーキシステムへと進化している。また安全装備だけでなく、環境への配慮を重視した経済性にも力を入れていて、近年は独自に開発した高効率エンジンをラインアップしている。


新開発の1・5リッターエンジンを搭載

ボルボは乗用車、商用車、建設機械などを擁する企業グループだったが、1999年に乗用車部門がフォード傘下に、2010年からは中国資本となっている。そのうえで新たに直列4気筒・2リッターを上限として、基本設計を共有したガソリンエンジンとディーゼルエンジンを新たに開発したのだ。ミドルサルーン「S60」に搭載されるのは排気量の異なるガソリンエンジンとディーゼルエンジンで、今回試乗した「S60 T3」は、1・5リッターのガソリンターボ搭載車だ。このエンジン、わずか1700回転から最大トルクを発揮するため、1・5リッターとは思えないほど力強い加速をみせる。絶対的なパワーは控えめだが(152馬力)、街中での発進加速や高速道路でのクルージングで不満は感じることはまずない。

 

静かに主張するインテリジェントなスタイリング

スタイリングにもボルボの主張がある。日本では80~90年代に角張ったデザインのエステート(ワゴン)が流行ったこともあり、いまだにボルボといえば「四角いクルマ」というイメージが強いが、60年代には曲線基調のスタイリングの美しいモデルをつくりだした歴史があり、決して宗旨替えしたわけではない。「S60」は近年のボルボのデザイントレンドに則った上品なスタイリングが持ち味で、インテリアもモダンで機能的にレイアウトされている。清潔かつインテリジェントなそのたたずまいは、森が多く自然の存在を強く意識する北欧だからこそ生まれたものといえる。スタイリング同様、乗り味も上品でスムーズそのもの。ちなみに、「S60」の他グレードで選べるディーゼルエンジンは抜群の静粛性と、こちらもきわめて低い回転域から発生する最大トルクを誇る、実に上質なユニットだ。パワフルで押し出しの強いドイツ勢が圧倒的人気を誇る日本で、最新世代のボルボはむしろ新鮮に映る。豊富な車歴を誇る紳士なら、この「北欧生まれの上質な世界」に、きっと共感できるに違いない。

〈ボルボ・S60 T3 (SE)〉
全長×全幅×全高:4635×1845×1480㎜
車両重量:1580kg
排気量:1497cc
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
最高出力:152PS/5000rpm
最大トルク:250Nm/1700~4000rpm
駆動方式:2WD
トランスミッション:6AT
価格:434万円(税込)
(問)ボルボお客様相談室 ☎0120-922-662

この記事の執筆者
TEXT :
櫻井 香 記者
2018.2.11 更新
男性情報誌の編集を経て、フリーランスに。心を揺さぶる名車の本質に迫るべく、日夜さまざまなクルマを見て、触っている。映画に登場した車種 にも詳しい。自動車文化を育てた、カーガイたちに憧れ、自らも洒脱に乗りこなせる男になりたいと願う。