最高のSUVを目指した20年

 
 

メルセデス・ベンツがSUVに力を入れるようになったのは、ここ20年ほど。1979年に誕生したロングセラー、「Gクラス」という例外はあるものの、あちらは軍用車両として開発されたクロスカントリー指向のクルマであり、車名の元となった「ゲレンデヴァーゲン」も、そもそもオフローダーを意味する言葉である。オン/オフ問わず快適に走れるという意味でのSUVは、1997年に登場した「Mクラス」が最初だ。その「Mクラス」、初代はオフロード性能こそ秀逸だったものの、内外装の仕立てに難があり、ラグジュアリーカーと呼ぶには微妙なクオリティだった。その後、改良やモデルチェンジを重ねた結果、現行の3代目(2011年~)では他ブランドの競合モデルにも負けない堂々としたスタイリングとラグジュアリーな装備を満載するほどまでに進化する。


クーペの持ち味を引き出した名デザイン

 
 

3代目「Mクラス」は2015年、デザインや装備を大幅に改良して、新たに「GLE」を名乗るようになった。さらに、低く流れるようなスタイリングを持つ「GLEクーペ」も加わり、長年の改良でプレミアム感を増した「Gクラス」とは、ベクトルの異なる洗練さを身に着けている。「ボディに厚みのあるスポーツクーペ」という言葉がぴったりな「GLEクーペ」、特に美しいのは後ろ斜めから見たときのスタイリングだ。男性的な力強さを保ちつつ、フォーマルな場でも通用するほどのエレガンスは、近年幅広いラインアップを誇るメルセデス車のなかでも出色の出来といえよう。

おすすめは「メルセデスAMG」モデル!

 
 

乗り味も期待を裏切ることはない。多段化された9速ATと「4マチック」と呼ぶフルタイム4WDの組み合わせによる、滑らかで安定感の高いコーナリングは、ドライバーの動きに正確でありながら、高度な電子制御で荷重移動をアシストしてくれる。エンジンは3リッターのV6ディーゼルターボが基本で、低速から力強く経済性にも優れるが、より上質なフィーリングと爽快な加速感を味わいたいなら、高性能バージョンの「メルセデスAMG」モデルをおすすめする。トップモデルはガソリンエンジンの5.5リッターV8ターボを積む「GLE 63 S 4マチッククーペ」で、これならばアクセルを踏み込んだ途端に体をシートに押し付けられる圧倒的な加速を満喫できる。2・4トンもの車重をものともしないパワーだけに節度のある運転が求められるが、もう少し大人びた謙虚さをお望みなら、ガソリンエンジンの3リッターV6ツインターボを積む「GLE 43 4マチッククーペ」がいい。スポーツモデルとはいえ、足回りの固さはほどよいレベルで、ゆったりと走るクルージングも気持ちいい。美しく、高い視点ゆえの開放感にもあふれる「GLEクーペ」は、紳士の細かな欲求にもしっかり応えてくれるのである。

※写真はすべて「GLE 43 4マチッククーペ」

〈メルセデス・ベンツ GLE 43 4マチッククーペ〉
全長×全幅×全高:4890×2015×1720㎜
車両重量:2310kg
排気量:2996cc
エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ
最高出力:367PS/5500~6000rpm
最大トルク:520Nm/2000~4200rpm
駆動方式:4WD
トランスミッション:9AT
価格:1200万円(税込)
(問)メルセデスコール ☎0120-190-610

この記事の執筆者
TEXT :
櫻井 香 記者
2018.2.11 更新
男性情報誌の編集を経て、フリーランスに。心を揺さぶる名車の本質に迫るべく、日夜さまざまなクルマを見て、触っている。映画に登場した車種 にも詳しい。自動車文化を育てた、カーガイたちに憧れ、自らも洒脱に乗りこなせる男になりたいと願う。