10年前の数十倍、数百倍ともいわれる情報が飛び交う現代、モノにあふれかえる今の世にあって、流行に盲従することなく真に価値のあるものを世に届けたい、そして本当の“カッコ良さ”を読者のみなさまと追求していきたい──そんな思いから、『MEN’S Precious』は2009年に女性誌Preciousの増刊として産声を挙げました。女性誌Preciousが確立した名品主義を踏襲し、過剰な演出を排し、全ページが直球勝負。美しい写真、格調高い文章、上品で清潔感のあるコーディネートを主眼に、1ページ1ページ丹精込めて編集しています。

数あるメンズファッション誌との大きな違いはふたつあります。

まず、『MEN’S Precious』が目指す理想の男性像は、現代のハリウッドセレブでもファッショニスタでもなく、評価の定まった往年の伊達男・紳士たちであること。時代に淘汰されることなく、未来永劫輝き続けるであろう男たちです。たとえばウィンストン・チャーチル、ウィンザー公、ジャン・コクトー、白洲次郎……例をあげれば枚挙にいとまがありません。ミュージシャンも俳優もまるで消耗品のごとく、現れては消えていく昨今、彼らがいまなお輝いて映るのは、単なるファッションだけの話にとどまりません。世におもねることなく、自らの生を貫いた彼らの精神性も含め、真にカッコよく、ダンディでジェントルマンだったといえるのではないでしょうか?

ふたつめは「名品」の追求です。『MEN’S Precious』に掲載される商品の平均単価は、おそらく日本のメンズ誌の中でもっとも高い、と言えるでしょう。「高いからいいモノ」というのは幻想にすぎませんが、「いいモノだから高くなる」というのは一理あります。熟練の職人が丹精込めて手縫いをしたシャツ、特級ランクの革を使った靴、精緻な歯車が文字盤の裏にひしめく機械式時計……そこには判を押したようなファストファッションにはない、叡智とつくり手の矜持が宿っています。数シーズンでたんすの肥やしになるモノをひたすら消費して生きていくか、たとえ数少なくても人生をともに歩んでいけるモノと仲睦まじく暮らしていくか、一度きりの人生、どちらが豊かで、美しいものでしょうか。たとえブランドの名前を伏せても、自ずと本物の風格を漂わせるモノ、長くつきあっていけるもの、そんな力が漲る「名品」を発掘していくのが、私たち『MEN’S Precious』編集部の使命です。

そして、さらにもうひとつこだわりがあります。それは静物写真のクオリティ。『MEN’S Precious』では、今なおフィルムでの撮影に取り組んでいます。デジタルの世界は0か1かの省略文化。「神は細部に宿り給う」と言われるように、私たちは0と1の間に潜む、0.1や0.2、ひいては0.123があってこそ、本物のオーラが届けられる、と信じてやみません。後から補正が利くデジタル写真ではなく、嘘偽りのない本番一発勝負の写真にこそ、パワーが宿ると私たち編集部は信じています。もしかするとそれは私たちの自己満足かもしれません。しかし、服にせよ、時計にせよ、酒にせよ、名品が生まれる舞台裏には、目に見えない箇所にまで心血を注ぐデザイナーやアルチザンたちのこだわりがあります。雑誌づくりもいわばモノづくりです。そういった「名品」にふさわしいステージをつくるべく、アルチザンへの敬意を込め、あえてじっくりとアナログ撮影に取り組んでいます。手縫いのシャツの優しいフィット感のように、ページをめくりながらアナログ写真の滋味を感じていただけますと幸いです。

「往年の伊達男」「名品」「フィルム撮影」。そこに通底するのは、「本物」であるかどうか。 非情な合理化、流行盲従、モノや人間の平均化を促すグローバリゼーション──そんな世の風潮に風穴をあけるかつてないメンズ誌『MEN’S Precious』を、末永くご愛顧いただけますよう、編集部一同、心よりお願い申し上げます。

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